決済好きが見ていたApple Payあるいは、Rebuildのチャプターを付けた話

Rebuild チャプター

miyagawaさんが過去のRebuildの録音のチャプター情報を手作業でつけてくれるボランティアを募集しているということで、かつて話し相手に呼んでもらえた回くらいはと思い立って、65, 65aを聞き直した。

話がごちゃごちゃに絡み合っていたため、促される通り大きなトピックでまとめた程度となったので1.5倍速でざっと聞いただけで大した作業量にはならなかった。

ところで、その中身だ。2014年11月1日の配信ということで、もう3年と数ヶ月前の話となっている。当時は配信後に結構うまく大事なことを説明出来たような気でいたのだが、改めて聞くと何も説明出来ていなくて、miyagawaさんがよくこれを受け止めて進行してくれたものだとがっかりするしかない。

ただ、触れられたトピックはApple Payを中心にStripeや今は亡きWebPay(時間が経っているように書いているけど、さすがにもう無いなんていうのはなかなかショックである)などに触れ、今で言う"フィンテック"のペイメントなパートに終始していたのは、今時間が少し過ぎてから変化を考察する対象として面白いかもしれないとタイプを初めた。

Apple Payはその後どうなったか

初めてApple Payで決済したのは2014年10月31日のマクドナルド(写真)。IRFの一部をせしめつつ、Appleは最高の仕組みを世に放った!と盛り上がったまま、私たちは結局Apple Payを日常的に使い続けるという姿には未だ到って居ない。

どこかで実際のクレジットカード、もしくは現金を取り出さないといけないことには変わりなく、それを回避するためには使用者が振る舞いを限定するしかない。例えば、僕個人では、サンフランシスコでの暮らしの中で、Android Payのみを利用していくことは不可能ではない。最寄りのコーヒー屋の端末、ランチを買うフードトラックのSquare端末、グロッサリーを買うTrader Joe'sやWhole Foods Marketのレジの端末はいずれも、Androidをかざせば決済出来る。それがひとたび同僚と飲みに行けば、現金かカードの必要性に迫られる。まだまだスマホと鍵だけを持って暮らすのは難しい。

日本でのApple Pay

Rebuildで当初予想していた「Visa payWaveやMasterCard PayPassが使えるようになって一緒に普及していくのだろう」というのは全く違う未来になっていて、日本ではVisa/Master系はiD、JCBQUICPayのプラットフォームの上で展開されることとなった。Visa, MasterCardのそれを普及させるより、既に店頭に普及していた端末で都合がつくものが選ばれたと思うと妥当そうだが、それらのイシュア側が実装(というかビジネス上の折り合い)を短期間でとても頑張ったのを思うと予想外の形に驚きもした。

「クレジットカードの情報をiOS端末から、カード発行元に投げつけて何らかの認証を経てバーチャルカード番号が返され、iOS端末に保存される」というブランドの非接触カード由来のApple Payの変わらない仕組みが、iDのためのシステムで動いている。

また日本が違うのはFelicaの点だ。iDやQUICPayFelica端末を前提にしているのはハードウェアを載せたAppleの画策通りか、SuicaApple Pay(というかWalletアプリ)に移すことが出来るようになった。

VIEWカードの絡みかJR東日本の都合かは知らないが、オートチャージの点などでは歪な形を見せることとなっているものの、東京ではiPhoneApple Watchを改札でかざす姿が珍しくないほどには見かけられ、ある程度の成功を見せていると感じさせるような話を聞く。ようやくという気持ちもあるが、なかなか動かない日本のペイメント周辺の世界がこの3年を過ぎるまでにこれらのことを叶えたのだと思うと少しニヤける。未だに多くのサービスがカード番号はおろかセキュリティコードをサーバ側に送っている世界観の中で。

これらの結果もあって、ウェブ上での利用も同様に順次普及していくのだろう。ようやくPayment Request APIの話題も多く見えるようになってきて、Apple PayはSafariiOS Appのものだけではなくなるし、日本でのクレジットカード向けのAndroid Payのリリースもきっと遠くないようなので、各サービスが準備する時期になってきているように思う。

CurrentC

収録の後、早々に見かけること以前に聞くこともなくなったが、会話の中で残念な対象として扱っていたQRコードは皮肉にも今、決済の最先端と言われるAlipayなど中国サービスのメジャーな決済用のプロトコルになっている。深センで働く同僚はQRコードを入れ墨にするというのは冗談ではないと語ってくれた。やっていることはCurrentCと何も変わらないのだが、凄い勢いで多くの人が使えるものとして普及させられれば、使用技術が大きな問題にはならないのだろう。日本ではもうじき、Felica端末同士を人々がBumpしあっているかもしれない。Android Beamは2011年のリリースであった。どんな形であれ、多くの人に使ってもらえるという文脈ではLINE Payの可能性も大きくありそうだが僕は買収後でも、数ミリ程度しか関わりがないので何も言えることはない(関わっていても逆に言えないか)。メルペイもそうだろうし、2014年の11月の時点でおそらく日本で初めてApple Payの仕組みをWebPayで解き明かしたsowawaが取締役になったのだからなんかやるんだろう。

US

残念ながら、あの当時とほとんど変わっていないのはアメリカかもしれない。未だに僕たちはVenmoやSquare Cashでお金を投げ合っている。Appleも同様の仕組みを最近出したが中身はほとんど同じ。ただ、かつて目を輝かせて見ていたFintechなサービスたちが着実に改善を繰り返していて、当たり前のようにデザインを磨いているシーンだけは未だに一番良く映る。Stripeなんて良い形のままどれだけ大きく、どれだけやれることが増えたか。

ただ、ここ最近で一番気に入っていたFinalは先月唐突にクローズすることとなった。

というふっとした振り返りを聞きながらさせられてしまい楽しかったです。Rebuildの古いエピソードを聞いて思いを馳せつつ、チャプター情報も残せるといいんじゃないでしょうか。200エピソード到達、5周年おめでとうございます。