"マシン"から"ロボット"へ.高専ロボコン2009全国大会

今年も高専ロボコン全国大会を見に行って来ました.
相変わらず昼に着いた頃には両国国技館の前の一般入場は行列で,観る側の盛況ぶりは変わっていないようで安心しました.
今年は母校の応援席のポジションが久しぶりにフィールド正面の枡席になっており*1,枡席に3人詰める窮屈さを覗けば最高の観戦コンディションでした.

ただ,まだ知っている後輩が出場しているせいか僕の観戦の態度には緊張があったようで,連れて行った方には迷惑をかけました.
去年興味を持って見に来てくれた営業のid:yosukeさんは,来てくれなかったのが心残りです.笑

今年の競技課題などについては前エントリ

で述べているので省略して,大会を見て思うところを書いておきたいと思います.

大会結果

最近はNHKもウェブに情報を載せるのが早いですね.

再び詫間電波高専(改め香川高専詫間キャンパス)の優勝です.するべきことを完璧にこなす姿勢,そしてそれが毎年必ず成果に結びついているのは本当に圧巻でした.ヒールな役ばかりを買って出ていたチームですが,決勝の舞台では本当に会場を味方にする動きを見せてくれました.

準決勝で母校の北九州と8年ぶりに当たったので少し感慨深かったです.

マシンとロボット

初めて全国大会を生で見て8回目.
出場しているロボットを実況,解説が"マシン"と指さなくなっていることに気づきました.
去年もそうだったのかもしれませんが,今年は全く聞かなかった気がします.

少し前までの競技は,まだ1つの目的に対してアプローチは違うものの,同一の作業をこなすという点,競技の本質とロボットのデザインが深くリンクしていなかったという点からか,"マシン"と誰もが指していました.
それが今年は,どのテーマをこなすか,どのようにそれを表現するかという点が着目されるようになり,本当にロボットと呼ぶに相応しい形になってきています.少しずつ人間の出来ないことをやらされる機械から,人間と同様のことをやるロボットへと競技テーマへの答えがシフトしている姿は日本でのロボットコンテストの生みの親,森正弘先生が提唱した不気味の谷へ少しずつ向かい出したような気がして,妙な縁を感じます.

前のエントリで言った"ASIMOを馬鹿にしていた"というのは,競うベクトルの違いからだったんじゃないかと今日になって思いました.人間の出来ないことが出来る"マシン"を僕たちは作っていて,人間と同様のことをやるASIMOとは何も競えなかったのだなぁという風に.

ロボコン大賞は狙って作れるのか

もう1つの注目はロボコン大賞.優勝旗よりも大きな大賞旗.僕たちが閉会式の最後まで残ってしまう理由.今年は広島商高専に授与されました.表彰の理由は,やるべきことを全てこなせるもの,美しいものをたった二人の女の子(しかも2年生)で作ったというものでした.

納得せざるを得ないような,納得出来ないような理由ではありますが,彼女達が称えられるのは確かです.初めてパンフレットの出場メンバーに書かれている名前が3名じゃなく2名だったチームを見て,唖然としてしまいました.

今回の大賞は,おそらく人の目に見ても素晴らしい踊りを見せていた舞鶴高専だと思っていたのですが,とうとう狙って大賞を取れないのだと諦めがつくような気にさせられました.
どうやったら会場を驚かせられるだろう,大賞を貰えるのだろうと悩んで来た高専生も来年は更に苦悩を深めるのではないかと思います.

狙って作れる大賞機は,きっと圧巻すぎる強さを持つロボットだけ.しかし,それが大賞に選ばれるのかも運.2007年の騎馬戦の時から主催者側は難しいシフトを現役の高専生達に突きつけて来ていたのが,今年で本当に明らかになったのだと感じます.

10周年


余談ではありますが,母校のチームが組織されてから10周年ということで,大会の後はちょっとした食事会にお誘いを頂きました.羨ましく思っていた現役生を前に僕は,本当に老害が吐く言葉しか並べられないのだなぁと,戻れない4年前を細い目で眺めています.

一生懸命にやり過ぎて暴走していたチームも,うまく大人と折り合いを付けながら自分達の作りたいものを作って,堂々と大会に挑んで,大人しく悔しがる姿を見ると,取り組む人間達も変わっているんだなと再認出来ました.少しは悔しがりすぎて目を腫らして声が出なくなってなんてこともあっていいんじゃないかなって思ったのは,僕たちが今年の後輩達と全く同じ結果である,全国大会でベスト4,受賞無しという状況だったからだと思います.呆れることに,懐かしむことしか出来ませんね年寄りは.

絶えず変化して繰り返される

求められる技術レベルは絶えず上げてくるNHKとよく向き合えている高専生の年齢は,22年目にしても15-20歳*2と永遠に変わりません.
僕の入る前の年の2001年には,操縦が有線から無線(赤外線or音or可視光)になり,2004年には自動制御が含まれ,今ではbluetoothwifiが使われてロボット同士が通信を行っています.
レベルの上がる競技課題以前,学生のアイデアを具現する前提の技術の水準は上がっていくばかりで,いつかは企業の現場で生み出す技術をロボコンに取り組んでいる学生が生み出してしまうのではないかと期してしまいます.
観る側に立って枡席からフィールドを眺め思うのは,毎年強まってくる現役のロボコニストに対する嫉妬でしょうか.僕がまだ言うべき台詞ではありませんが,「若い人達が羨ましい」というのはこういう時に思うものなんでしょう.


てめーも何かやれんだろという自戒で今年の僕のロボコン観戦を締めくくろうと思います.

まだ大会の放送が

  • 12/28 22:00- @NHK総合
  • 1/1 10:00- @NHKBS2
    • 全試合放送版

もありますので,年末年始に皆さんもお楽しみ頂ければ.
まだ情報が出ていないようですが,12月上旬〜中旬あたりで地区大会が全国で再放送されることと思います.

今年の出場者に多謝!

*1:去年は西,一昨年は東

*2:留年とか裏技はあるかもしれませんが